①法人概要
株式会社リクラス様は、関西を中心に医療・介護・福祉・障害の四領域で多角的なサービスを展開し、地域包括ケアの実現を掲げて急速に事業規模を拡大している法人です。歯科、クリニック、訪問看護ステーション、介護施設、放課後デイサービスなどを同一エリアに展開し、利用者が生涯にわたって切れ目のない支援を受けられるネットワークを構築している点が大きな特長です。また、ICTを活用した業務効率化や、地域の医療・介護資源を束ねるプラットフォーム運営に早期から取り組むなど、常に革新的なチャレンジを続ける姿勢が高く評価されています。
②なぜ依頼したか
そのリクラス様が今回、当社にご依頼くださった背景には、「歯科」領域の専門性を強化し拡大していきたいと考えていたからです。同社はこれまでも内科・在宅医療を中心にクリニックを運営してきましたが、高齢社会を迎えた背景もあり、誤嚥性肺炎のリスク低減やQOL向上を目的とする口腔ケアの需要が急増しています。さらに、同社が運営する訪問看護や介護施設とのシナジーを最大化するうえで、歯科訪問診療の機能は欠かせません。しかし、訪問歯科の拡大には歯科医師・歯科衛生士の確保、訪問ルートの設計、医科連携の仕組みづくりなど多岐にわたる専門ノウハウが必要であり、社内リソースだけでは短期間での体制構築が困難でした。そこで、歯科分野の実務と経営支援の双方に実績を持つ川口がパートナーとなり、訪問歯科部門をスピーディーに拡大するプロジェクトを推進することになりました。
③実施した内容
プロジェクトの第一フェーズでは、人材採用を最優先課題に設定しました。訪問歯科はスケジュールの大半を車両移動に費やすため、常勤の歯科医師が複数名在籍しないと計画的なルート設計や緊急往診への柔軟対応ができません。そこでまずはAMIさんの採用代行を御願い致しました。内容的には、既存の求人媒体に掲載されていた募集要項・クリニック紹介ページを全面的にリライトして頂きました。具体的には以下の内容です。
- 口腔ケアを通じて地域包括ケアに貢献できる醍醐味
- 多職種チーム医療での成長環境
- 法人全体のワークライフバランス
といった訴求軸を明確化しました。
さらに、競合も調査頂き自院の地域での待遇のポジショニングが明確となりました。 開始からわずか45日で常勤歯科医師2名、非常勤歯科衛生士1名の採用に成功しました。
並行して、訪問件数を増やすための施設開拓を二本柱で進めました。一つ目は既存取引先である高齢者施設に対し、口腔機能向上プログラムと摂食嚥下リハビリをパッケージ化したサービスを提案し、月次の訪問枠を増枠する「シェアアップ戦略」です。 二つ目は、市区町村の介護保険課や地域包括支援センター主催の多職種連携会議に積極的に参加し、ケアマネジャー経由で新規施設を紹介してもらう「リファラル開拓戦略」です。これにより、稼働開始から3か月で訪問先施設は当初比178%に拡大し、診療ユニット稼働率も90%を超える水準に到達しました。
ルート最適化にもメスを入れました。従来は各医師が経験則で訪問順を決めていたため、移動距離が長く診療開始時間が遅延するケースが散見されました。当社はGISを活用したルートシミュレーションを行い、①施設の所在地、②患者の緊急度、③医師・衛生士のペアリング、④道路混雑度を変数として週次でルートを再計算する仕組みを構築しました。その結果、平均移動距離は22%短縮、移動時間は月間で延べ18時間削減でき、医師1名あたりの月間診療人数が32名増加しました。時間創出効果がスタッフの働きやすさ向上につながり、離職率低下にも寄与しています。
④成果
これらの取り組みを通じて、訪問歯科部門の売上は立ち上げから半年で1.5倍へと急成長しました。外来では対応しきれなかった摂食嚥下障害や周術期口腔機能管理のニーズを在宅で吸収できるようになり、リクラス様全体の患者満足度指標(CSスコア)も改善しました。また、医科クリニックとの情報共有が進んだことでおります。
現在は、訪問部門の実績を足掛かりに、本院外来を移転拡張し「歯科・歯科クリニック」へのリブランディングを進めています。当社は新設外来のコンセプト設計、診療導線の最適化、医療DX(オンライン診療・自動精算機)の導入計画策定を支援させて頂いております。
最後になりますが、この成果はリクラス様の迅速な意思決定と現場スタッフの献身的な協力あってこそ実現したものです。当社は今後も二人三脚で歩みを進め、口腔から始まる健康づくりを北海道全域へ広げるべく、挑戦を続けてまいります。