株式会社AMIの松山です。この度は私のコラム記事を訪問していただき誠にありがとうございます。
2020年代に入り、歯科医院の人材マネジメントは大きな転換期を迎えています。新卒スタッフの価値観は大きく変わり、「待遇」よりも「働きやすさ」や「人間関係」「成長実感」に価値を感じる傾向が強まっています。
かつては「教えれば育つ」「給料を上げれば続く」時代でしたが、令和時代の若手スタッフには通用しません。離職を防ぎ、モチベーション高く働いてもらうには、医院経営者としての“環境設計力”が問われます。
この記事では、これからの時代に求められる「モチベーションを高める職場環境作り」のポイントを、現場で実践できる形でご紹介します。
目次
第1章:令和人材の価値観を理解する
1-1.「安定」より「自分らしさ」
Z世代やミレニアル世代にとって、職場は「人生を豊かにする場所」であり、ただの生活の糧ではありません。職場に求めるものは「自己実現」「成長」「人間関係」であり、どれか一つでも満たされなければ離職の理由になり得ます。
1-2.ティーチングからコーチングへ
指導者が一方的に知識を与える「ティーチング」ではなく、本人の意思を尊重しながら導く「コーチング」が有効です。「なぜこの仕事が必要なのか」を一緒に考え、「あなたらしいやり方で挑戦してみよう」と促す関わり方が、やる気を引き出します。
1-3.「承認欲求」へのアプローチがカギ
令和人材は「自分の存在が認められているか」を非常に重視します。日常の中での「ありがとう」「助かったよ」といった声かけ、月1回の1on1面談など、小さな承認の積み重ねが信頼関係とモチベーションを生みます。
第2章:モチベーションを支える「5つの職場づくりの柱」
2-1.【心理的安全性】
「怒られない」「否定されない」「相談できる」空気感を作ることで、スタッフは積極的に意見を出し、仕事にも前向きになります。たとえば、月1回の全体ミーティングで「提案大歓迎タイム」を設けるだけでも、大きな変化が生まれます。
2-2.【役割の明確化と成長の見える化】
職種ごとの期待値を明文化し、評価基準を言語化することで、「今の自分に何が求められていて、どうなれば昇格するのか」が明確になります。キャリアパスが明示されることで、やる気の持続につながります。
2-3.【スタッフ同士の関係性】
人間関係のストレスは離職理由の常連です。あいさつの徹底や、誕生日メッセージカードの共有、月1回のランチ会など、些細なことで“つながり”が生まれ、職場が安心できる場所になります。
2-4.【達成感・やりがいの演出】
たとえば「患者さんに笑顔で帰ってもらえた」「自費契約が取れた」など、小さな成功体験をきちんと言葉にして共有しましょう。成功を見える形にする仕掛けは、内発的動機を高めます。
2-5.【プライベートとの両立支援】
令和人材は「仕事と生活のバランス」を非常に重視します。有給取得の促進や、時短勤務、柔軟なシフト調整などの制度は、「この医院は私の人生も大切にしてくれている」という安心感につながります。
第3章:モチベーションを削ぐNGマネジメントとは?
3-1.“察して文化”は厳禁
「教えなくても分かってほしい」「自分で考えて動け」では伝わりません。若手には丁寧な説明と目的の共有が必要です。わからないことを「聞いていい空気」を作ることが重要です。
3-2.評価が曖昧
人によって評価が違う、評価されるポイントが分からない……これはスタッフにとって大きなストレスです。客観的な評価軸と、定期的なフィードバックで「自分の頑張りはちゃんと見られている」と実感させましょう。
3-3.「叱る」よりも「期待する」
感情的な叱責は、スタッフを委縮させ、職場をギスギスさせます。注意をする際も「〇〇さんに期待しているからこそ、こうしてほしい」と“未来志向”の伝え方を意識すると、相手の成長意欲を引き出せます。
第4章:医院全体のマネジメントを変える実践ステップ
ステップ1:スタッフとの対話機会を増やす
まずは「1on1ミーティング」を始めましょう。1回15分でもOK。「最近どう?」から始まる雑談ベースの対話が、信頼関係の基盤になります。
ステップ2:組織の行動指針を作る
「うちの医院ではこんな人が評価される」「こういう行動を大切にする」という“行動規範”を掲げることで、価値観の共有が進みます。これは面接・採用時にも非常に有効です。
ステップ3:マネージャー層の育成
経営者1人で全てを担うのは限界があります。主任やチーフに「承認」「傾聴」「対話」の力を持たせるため、外部研修やロールプレイングなども活用しましょう。
ステップ4:定期的な振り返りと改善
制度を作って終わりではなく、「今のマネジメントはスタッフにとってどうか?」を定期的に見直す体制を作りましょう。年1回の職場アンケートや、外部コンサルによる診断も効果的です。
【まとめ】:人が育ち、医院が育つ組織へ
モチベーションが高い職場には、自然と人が集まり、離れません。
令和の歯科医院経営において、人材確保と定着は最大のテーマです。そしてそのカギは、待遇や福利厚生ではなく、「人として大切にされていると感じる職場づくり」にあります。
スタッフが「この医院で働けて良かった」と思える環境を整えることが、長期的な医院の成長を支える礎になるのです。