皆様
いつもお世話になっております。株式会社AMI代表の川口です。お忙しい中、コラムをご覧いただき、誠にありがとうございます。
TC(トリートメントコーディネーター)を効果的に活用していくためには、感覚に頼らず、数値に基づく現状把握と課題分析が不可欠です。
「なんとなく成果が出ている」「カウンセリングは頑張っている」という“主観”に頼っていては、医院全体の生産性は上がりません。
今回は、TC活動の効果をKGI・KPI・KFSという3つの視点から数値化し、改善のヒントを得る方法について解説します。
なぜ「数値化」が重要なのか?
歯科医院経営において、カウンセリングや接遇、診療の丁寧さといった“質”は非常に大切です。しかし、改善の方向性を見つけたり、組織として成長を促すには、「何がどれだけ達成できているか」を客観的に把握する必要があります。
たとえば、
- 自費のカウンセリングは何件あったか?
- そのうち、いくつが成約につながったか?
- 平均単価はいくらか?
このような数値が明確でなければ、どこに改善余地があるのか見えてきません。
KGI・KPI・KFSを設定してPDCAを回す
以下の3つの観点で指標を設けることで、TC活動を「見える化」し、改善を続ける土台ができます。
KGI(Key Goal Indicator:最終目標)
医院経営における成果のゴールです。
- 自費収入額(月間・年間)
- 自費率(総収入に占める割合)
※例:目標自費率20%以上
KPI(Key Performance Indicator:プロセス指標)
KGIを達成するための「過程」を数値化します。
- 自費カウンセリング実施件数
- 自費治療の成約数/成約率
- カウンセリングから治療開始までのリードタイム
- 自費治療の平均単価
KFS(Key Factor for Success:成功要因)
KPIを実現するために不可欠なスキルや施策です。
- TCのカウンセリングスキル
- 使用資料(症例写真、料金表など)の整備
- 院内連携(医師・衛生士・受付との情報共有)
- 事前問診や来院時の導線設計
TC活動における「必須集計項目」
次に、医院で日々記録しておくべき具体的なデータ項目をご紹介します。
指標 | 目安/目的 |
新規患者数(チェア1台あたり) | 6〜8名:〇、8〜10名:◎ |
自費カウンセリング実施件数 | TCの活動量の把握 |
成約件数・成約率 | カウンセリングの質を可視化 |
平均単価(1件あたりの自費額) | 自費の単価向上施策の効果確認 |
無断キャンセル率・電話キャンセル率 | リマインド施策やLINEの効果測定 |
リコール移行率(60%以上目標) | 長期フォロー体制の評価指標 |
自費率(総収入に対する割合) | 医院全体の収益構造を把握 |
これらの項目を月単位・四半期単位で集計・比較することで、施策の効果や変化を正しく評価できます。
課題の「特定」から「改善」へつなげる
単に数値を集めるだけで終わってはいけません。重要なのは、なぜその数値になっているのかを分析し、改善策を打つことです。
例:
- カウンセリング件数は多いが成約率が低い → トーク内容や資料の見直し、SPIN話法の導入などが必要
- 自費単価が伸び悩んでいる → 審美補綴やインプラントなど高単価治療へのアプローチ不足が原因
- 無断キャンセルが多い → LINEによるリマインダーや事前説明の不足を疑う
このように数値は「結果」であり、そこから「原因」を導き出し、「行動」に変えることが肝心です。
チームで“可視化”を共有する意義
カウンセリング成果の数値化は、TC個人の成績評価にとどまりません。チーム全体で「見える化」された数値を共有することで、以下のような効果が生まれます。
- 医師が「どこで説明を補強すべきか」がわかる
- 衛生士が「患者の潜在ニーズ」を把握できる
- 受付が「予約導線の工夫」を考えるようになる
さらに、スタッフ全体の意識も「自費率=医院全体の成果」と捉えるようになり、組織としての推進力が高まります。
まとめ:数値は嘘をつかない。改善の“道しるべ”にせよ
自費治療の成約率や自費率を高めるために、感覚や気合だけで動くのではなく、「見える化」された数値に基づいて考えることが何よりも重要です。
数値は時に厳しく、時に安心材料にもなりますが、それらはすべて「正しい打ち手を導くためのヒント」になります。
次回は、こうした改善活動の中で特に効果が高い、「トークフローの型化」に焦点を当てて解説します。どんな話し方をすれば患者様に“響く”のか?TCが使える心理トーク術や事例を交えてお届けします。