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歯科医院開業時における自費診療の価格設定を考える
歯科医院の開業を考えている皆さん、そして現在開業準備を進めている皆さん、自費診療の価格設定について頭を悩ませていませんか?保険診療とは異なり、自費診療の価格は歯科医院が自由に設定できます。この自由度の高さが、同時に大きな悩みにもなり得ます。「いくらに設定すれば患者さんに選んでもらえるのか」「収益性を確保するためにはどうすれば良いのか」といった疑問は尽きないでしょう。また、開業している先生も現在の日本国内でもインフレが続いており、値上げを検討れさている医院様も多いのではないでしょうか?
日本のインレフ率推移(以下URL参照)
https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=PCPIPCH&c1=JP&s=&e=

今日のブログでは、歯科医院の経営において極めて重要な要素である自費診療の価格設定について、提供された情報をもとに深く掘り下げていきます。単に「いくらで売るか」という表面的な話にとどまらず、その背景にある経営指標やマーケティングの考え方、そして患者さんに「選ばれる」ための価格の伝え方まで、多角的に解説します。
開業までのスケジュールは以下を参照下さい。
経営戦略としての自費診療価格設定
歯科医院の経営を成功させる上で、自費診療は避けて通れない重要な要素です。なぜなら、自費診療の価格設定は、医院の売上に直結するだけでなく、LTV(顧客生涯価値)やROI(投資利益率)といった、より長期的な経営指標にも大きな影響を与えるからです。また、利益率にも大きく寄与するかと思います。
マーケティングに関する詳しい内容は以下を参照下さい。
売上を因数分解する「単価」と「客数」
まず、最も基本的な経営指標である売上について考えてみましょう。売上は「単価 × 客数」で因数分解できます。このうち、自費診療の価格はまさに「単価」そのものです。高単価の自費診療を提供することで、たとえ客数が同じでも、売上は大きく向上します。逆に、自費診療の単価設定を誤ると、どれだけ多くの患者さんが来院しても、期待する売上を達成できない可能性があります。

LTV(顧客生涯価値)とROI(投資利益率)への影響
さらに、自費診療の価格設定は、より長期的な視点での経営指標にも影響を与えます。
- LTV(顧客生涯価値):LTVは「来院単価 × 来院頻度 × 来院継続期間」の積で計算されます。自費診療の単価が高ければ高いほど、当然ながら来院単価が上がり、LTVも向上します。LTVが高まるということは、一人の患者さんが生涯にわたって医院にもたらしてくれる価値が増大するということ。これは、安定した経営基盤を築く上で非常に重要な要素です。(マーケティング思考で重要な考えです)

- ROI(投資利益率):ROIは「利益 ÷ 顧客獲得コスト」で算出されます。自費診療の価格設定が適切であれば、高い利益を生み出し、結果としてROIも向上します。特に、 Webマーケティングなどで広告費を投じる場合、その広告費に対してどれだけの利益が得られたかを示すROIは、マーケティング戦略の成否を測る上で不可欠な指標です。
これらの経営指標を意識し、広告費に対する利益の「勝ち筋」を作ることがマーケティングにおいては非常に重要です。勝ち筋とはいくら投資すると、いくら収益が上がるか?になります。これは、自費診療の価格設定も、単に費用をカバーするだけでなく、これらの経営指標を向上させるための戦略的な視点で行うべきであります。 つまり、自費診療の価格設定は、単なるコスト計算ではなく、医院の未来を左右する重要な経営戦略の一環として捉える必要があるのです。

価格設定は「アート」ではなく「サイエンス」に近づける
- 顧客理解と競合理解の重要性
マーケティングの目的は、「販売を不必要にすること」、すなわち、顧客を十分に理解し、顧客に合った製品やサービスが自然に売れるようにすることです。これは自費診療の価格設定においても同様です。
- 顧客の理解:
価格設定の前に、まずはターゲットとなる地域住民の年齢、所得、人の流れといった顧客に関する深い理解が不可欠です。高額な自費診療は、患者さんの所得レベルと密接に関わってきます。例えば、高所得層が多い地域であれば、ある程度高めの価格設定でも受け入れられやすいかもしれません。逆に、所得レベルがあまり高くない地域で高額な自費診療ばかりを提案しても、患者さんにとっては手の届かないものとなり、結果的に選択肢から外されてしまう可能性が高まります。
- 競合の理解
- 顧客理解と並行して、競合の理解も不可欠です。近隣の歯科医院がどのような自費診療を、いくらで提供しているのかを調査することは、自院の価格設定を客観的に評価する上で非常に重要です。競合と比較して、自院の価格が妥当であるか、あるいは競合に対して優位性があるかを確認することで、より競争力のある価格設定が可能になります。
価格設定は一度行ったら終わりではありません。定期的に自費価格の見直しを行い、競合と比較してその価格が妥当であるか、競合に対して優位性があるかを確認することが重要であると強調されています。これは、市場は常に変化しており、競合の動向や患者さんのニーズも移り変わるため、柔軟かつ継続的に価格戦略を調整していく必要がございます。
Webマーケティングにおける価格の伝え方
現代において、多くの患者さんが歯科医院を探す際に活用するのがインターネットです。特に高額な自費診療である矯正治療などは、Webサイトの情報を隅々まで確認し、比較検討する患者さんがほとんどでしょう。近年の歯科業界のWebサイトは「Web3.0」の時代に移行しており、単に情報があるだけでなく、症例や口コミといった医院の【実態】が分かるサイトがユーザーに選ばれる傾向にあります。
高額な自費診療においては、患者様は「支払う金額に見合った成果が得られるか」「イメージ通りの歯並びになるか」といった不安を抱きやすいものです。だからこそ、Webサイト(特にLP:ランディングページ)で価格を提示する際には、患者さんの心理的なハードルを下げるための工夫が重要になります。
詳しい内容は以下を参照下さい。
価格を「安く見せる」工夫
高額な治療費に対する心理的なハードルを下げるための具体的な工夫として、以下の点が挙げられています。
- 料金表に幅を持たせる工夫
- 例えば矯正治療であれば、アライナーの枚数や抜歯の有無を組み合わせた**複数の料金プラン(例:4つの料金プラン)**を用意することが有効です。これにより、患者さんは自身のニーズや予算に合わせて選択肢を持つことができ、「この金額なら手が届くかも」と感じやすくなります。様々なニーズに対応し、患者さんのインサイトをカバーする料金設定を実現できるでしょう。
- デンタルローンの月額金額を併記
- 高額な治療費を一括で支払うのは難しいと感じる患者さんも少なくありません。そこで、デンタルローンを利用した場合の月額金額を併記することで、心理的な負担を大きく軽減できます。例えば、「総額〇〇万円」とだけ表示するのではなく、「月々△△円~」と加えることで、現実的な支払いイメージを持ってもらいやすくなります。
競合商品と比較した時の優位性の記載
価格が安い競合製品と比較した場合の、自院の自費診療の優位性を明確に伝えることも重要です。単に「安さ」で勝負するのではなく、なぜその価格なのか、その価格に見合うだけの価値がどこにあるのかを具体的に説明する必要があります。例えば、「他院の格安矯正プランでは対応できない難症例にも対応可能です」といった具体的な比較で、自院の強みをアピールできます。
症例掲載による価値の可視化
患者さんの不安を解消し、提示価格に対する価値を伝える上で非常に重要なのが、豊富な症例の掲載です。単なるBefore/After写真だけでなく、以下の詳細情報を併記することで、治療の具体的なイメージを持ってもらいやすくなります。
- 矯正種類
- 主訴
- 治療方法
- 抜歯の有無
- 治療回数(期間)
- 総額
- デンタルローン利用時の月額金額
競合医院よりも圧倒的な症例数を掲載することは、Web上で比較された際に「実績がある医院」として認識されることに繋がり、患者さんの信頼感を高めます。Web3.0時代において【実態】が重視されるからこそ、実際の治療結果を具体的に示すことが、患者さんが自院を選ぶ大きな要因となるのです。
価格だけでない価値の伝え方:患者さんの納得感を高める要素
自費診療を選んでもらうためには、価格だけでなく、その価格に見合う価値を伝えることが不可欠です。LP制作の重要なポイントとして、価格に加えて以下の点を記載することが挙げられています。これらは、患者さんが「この価格なら納得できる」「この医院なら安心して任せられる」と感じるための重要な要素となります。
当院としての強み
インビザラインなどの製品自体の特徴だけでなく、自院独自の矯正治療の強みを明確に伝えましょう。
- 実績:過去の症例数や治療成功率など、具体的な実績をアピールします。
- 認定医の有無:特定の治療における専門性を示す認定医がいることは、患者さんにとって大きな安心材料となります。
- メディア出演:テレビや雑誌などのメディアに取り上げられた経験があれば、その信頼性をアピールできます。
- 院長・スタッフの専門性やホスピタリティ:例えば、「難症例への対応経験が豊富」「最新の技術を常に学び続けている」「患者さんの悩みに寄り添う丁寧なカウンセリング」など、人的な強みもアピールポイントになります。
サービス内容
費用内でどのようなサービスが提供されるのか、詳細に伝えることも重要です。
- 治療方法の選択肢:ワイヤー矯正も可能であること、複数の治療法から最適なものを提案できることなど、患者さんの選択肢の幅広さを示します。
- 難症例への対応:他院で断られたような難症例にも対応できる体制があることをアピールすることで、より多くの患者さんのニーズに応えられます。
- 最新機器の活用:CTや口腔内スキャナーなど、最新の医療機器を導入していることは、質の高い治療を提供できることの裏付けになります。
- アフターフォロー:治療後のメンテナンスや保証制度など、長期的なサポート体制が充実していることを伝えることで、患者さんの安心感を高めます。
立地
患者さんにとっての利便性も、重要な価値の一つです。
- 駅からの近さ:アクセスが良いことは、通院の負担を軽減します。
- 駐車場の完備:車で来院する患者さんにとっては、駐車場があるかどうかが医院選びの重要な要素になります。
- 送迎サービスの有無:高齢の患者さんや遠方から来院する患者さんにとって、送迎サービスは非常に価値のあるサービスとなり得ます。
安心感の訴求
患者さんが気軽に相談できる環境を整え、信頼度を高めるための訴求も重要です。
- 無料カウンセリング時に契約を強く勧めない:患者さんがじっくり検討できる時間を与えることで、押し売り感を与えず、信頼関係を築きやすくなります。
- 他院で治療が難しかった患者様も受け入れている:これは、自院の技術力や対応力の高さをアピールすると同時に、患者さんの最後の砦となるような安心感を与えます。
- プライバシーへの配慮:個室の診察室やカウンセリングルームがあるなど、患者さんのプライバシーに配慮した環境を提供していることも安心感に繋がります。
これらの価格以外の要素で、自院の自費診療の価値を総合的に伝えることが、価格設定が適正であると患者様に納得してもらう上で非常に重要となります。価格だけで比較されるのではなく、「この医院だからこそ」という付加価値を明確にすることで、患者さんの「選ぶ理由」を創り出すことができるのです。
まとめ:自費診療価格設定のヒント
ここまで、提供された情報に基づいて歯科医院開業時における自費診療の価格設定について解説してきました。改めて、重要なポイントをまとめます。
- 価格設定は経営戦略の要:自費診療の価格設定は、単なる売上だけでなく、LTVやROIといった経営指標に直結する重要な要素です。これらの指標を意識し、「勝ち筋」を作る視点で価格を設定しましょう。
- データに基づいた「サイエンス」:価格設定は感覚で行う「アート」ではなく、データに基づいた「サイエンス」に近づけるべきです。地域住民の所得レベルなどの顧客理解、そして競合医院の価格調査・分析を徹底し、定量的なデータに基づいて行うことが成功確率を高めます。
- Webでの「見せ方」が重要:WebサイトやLPでは、高額な自費診療に対する患者さんの心理的なハードルを下げる工夫が不可欠です。複数の料金プランの提示、デンタルローンの月額表示などにより、価格を「安く見せる」工夫が有効です。
- 価格以上の「価値」を伝える:価格だけでなく、豊富な症例掲載や自院独自の強み(実績、サービス、立地、安心感の訴求)を明確に伝えることで、価格に対する価値を高め、患者さんの不安を解消することが重要です。特に歯科業界のWebは【実態】が重視されるWeb3.0時代に入っており、症例や口コミの掲載は不可欠です。
あなたの医院の「適正価格」を見つけるために
提供された情報には、自費診療の価格を決定するための詳細な計算方法や具体的な手順に関する情報は限られていますが、上記のヒントを参考にすることで、より戦略的な価格設定が可能になります。
自院のコンセプトやターゲット層、提供できる医療サービスの質、そして何よりも患者さんにどのような「価値」を提供したいのかを深く考え、これらを踏まえて適正かつ競争力のある自費診療の価格を設定することが、開業後の安定した歯科医院経営に繋がるでしょう。
価格設定は一度決めたら終わりではありません。開業後も市場の変化や患者さんの反応を見ながら、柔軟に、そして戦略的に見直しを続けていくことが成功への鍵となります。
以下からご相談ください。