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小児歯科
2025/04/15

歯科医院の小児歯科経営とは?

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歯科医院における報酬改定と厚生労働省の考え

2024年6月に実施された歯科診療報酬改定は、予防歯科の強化、デジタル技術の活用促進、在宅医療の推進など、歯科医療の質向上と持続可能性を目指す重要な変更が行われました。以下に主なポイントをまとめます。

予防歯科の強化

高齢化社会に対応し、口腔疾患の重症化予防が重視されました。特に、小児や高齢者の口腔機能管理に関する評価が見直され、保険適用の範囲が拡大されました。これにより、早期からの口腔機能の維持・改善が促進されます。


デジタル技術の活用促進

CAD/CAM冠用材料の適応範囲が拡大され、エンドクラウンや光学印象の保険適用が進められました。また、歯科医師と歯科技工士の連携加算が新設され、デジタル技術を活用した歯冠修復の効率化と精度向上が期待されています。


在宅医療の推進

在宅療養支援歯科診療所の評価が見直され、訪問診療の算定要件が緩和されました。これにより、在宅での歯科医療提供体制が強化され、高齢者や通院困難な患者への対応が充実します。


医療従事者の賃上げ評価

歯科衛生士や歯科技工士の賃金改善を評価する新たな加算が設けられました。これにより、人材確保と職場環境の改善が図られ、歯科医療の質の向上が期待されます。


かかりつけ歯科医機能の見直し

従来の「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」が廃止され、新たに「口腔管理体制強化加算(口管強)」が導入されました。これにより、口腔機能管理の実績や訪問診療体制の整備が評価され、地域における歯科医療の役割が再定義されました。


これらの改定は、歯科医療の質と持続可能性を高めるための重要なステップです。今後の歯科開業において、これらの変更点を踏まえた対応が求められます。

小児歯科を行う3つの理由

現代において小児歯科に注力すべき理由は、以下の3点が挙げられます。

口腔機能発達不全症の重要性

近年注目されるこの疾患は、食べる・話す・呼吸するといった基本的な機能の問題を指します。哺乳不良や口呼吸などが原因となり、放置すると不正咬合や全身の健康、学習能力にも影響を及ぼす可能性があります。早期発見と適切な指導・トレーニングは、小児歯科の重要な役割です。年齢が早い段階での介入を通じて保護者への啓蒙を行うことが、子どもの健やかな成長に不可欠です。

高齢化による地域医療の維持

院長の高齢化や後継者不足により歯科医院のM&Aが増加していますが、これにより専門性の高い地域の小児歯科が減少する懸念があります。小児歯科は、子どもへの理解や特別な設備・知識が求められます。小児歯科を強みとして地域に根差した経営を行うことは、子どもたちの口腔健康を守る拠点を維持し、地域医療に貢献するという重要な使命を担います。

小児歯科を強みとした差別化と成長性:

競争の激しい歯科業界において、小児歯科に特化することは明確な差別化戦略となります。専門知識、子どもが安心できる環境、保護者との信頼関係を築くことで、「子どものことならあの歯科医院」という独自のブランドを確立できます。これにより、小児矯正や口腔機能療法などへ展開し、長期的な患者との関係を構築し、安定した医院経営に繋げることが可能です。実際に小児矯正を強みに開業される医院様も増えております。実際の成功事例をご覧ください。

小児歯科展開の6つのステップ

2030年を見据え、小児歯科医院が持続的に成長するための具体的なステップは以下の通りです。

集客:公式LINEの活用                              

変化する集患トレンドに対応し、患者との継続的なエンゲージメントを強化します。オンライン問診票の導入による効率化、患者属性に合わせたセグメント配信、予約リマインダーによるキャンセル率低下、初診後のフォローによるメンテナンス移行率向上、双方向コミュニケーションによる満足度向上などを目指します。また、メッセージ機能を使った親へのデンタルIQ向上の施策や、LINEでの友達追加機能などの他院との大きな差別化になります。

集客:Instagramの活用

特に情報収集にSNSを活用する親世代に対し、視覚的に医院の魅力や小児歯科の情報を効果的に伝えます。ターゲットを明確にしたアカウント設計、院内の雰囲気や治療・予防に関する分かりやすい情報、症例紹介、イベント告知、スタッフ紹介などを継続的に発信し、フォロワーとのコミュニケーションを図ります。公式LINEへの誘導も意識します。

メンテナンス誘導

治療完了後の定期メンテナンス移行は、安定経営の鍵です。歯科衛生士による丁寧なカウンセリングで予防の重要性を伝え、リコールシステムの最適化(LINE活用含む)、年齢に合わせたプログラム提供、メンテナンスのメリット説明、などを通じて、生涯にわたる口腔健康管理をサポートします。

初診カウンセリング:小児カウンセリングの質の向上

初診は医院の印象を決める重要な機会です。保護者の話を丁寧に聞き、専門用語を避けた分かりやすい説明を心がけます。子どもの年齢や発達に合わせた対応、治療のメリット・リスクの明確な伝達、質問しやすい雰囲気作り、視覚的なツールの活用、無料相談の実施などを通じ、信頼関係を構築します。

0歳からの指導と保護者への啓蒙

保護者への教育・啓蒙は小児歯科の重要な役割です。マタニティセミナー、離乳食指導、歯ブラシ指導、フッ化物応用の推奨、悪習癖へのアドバイスなどを0歳から行います。院内セミナーやイベント、SNS・ウェブサイトなどを活用し、ターゲット層に合わせた情報発信(例:親世代にはSNS、祖父母世代には郵送など)を行います。

カウンセリングフロー:小児矯正へのスムーズな移行

不正咬合は見た目だけでなく機能にも影響するため、早期介入が有効です。定期検診でのスクリーニング、早期相談機会の提供(LINEでの案内含む)、小児矯正専門カウンセリングの実施(メリット、方法、費用等の説明)、症例写真の活用、保護者の疑問への丁寧な対応などを通じて、スムーズな矯正治療への移行を促します。また、医院独自の小児カウンセリング体制の構築が必要です。

小児カウンセリングの構築の仕方

  1. カウンセリングの目的を明確にする:
    • 何を伝えるためのカウンセリングなのかを明確にします。例えば、初診時の医院紹介や治療の流れの説明、検査後の診断結果と治療計画の説明、自費診療(矯正、予防など)の提案などが考えられます。
    • 定量的な目標を設定することも重要です。例えば、カウンセリング後の治療同意率や予約獲得率などを設定し、効果測定できるようにします。
  2. カウンセリングを担当するスタッフを決定する:
    • 歯科医師、歯科衛生士、トリートメントコーディネーター(TC)など、誰がカウンセリングを担当するのかを明確にします。
    • それぞれの担当者がどのような役割を果たすのかを定義することも重要です(例:歯科医師が診断と治療計画を説明し、歯科衛生士が予防に関する説明を行うなど)。
  3. カウンセリングのタイミングを設定する:
    • どのタイミングでカウンセリングを実施するのかを決定します。例えば、初診時、検査後、治療開始前、定期検診時などが考えられます。
    • それぞれのタイミングで伝えるべき内容を整理します。
  4. カウンセリングの内容を標準化する:
    • 説明資料やトークフローを作成し、誰が担当しても一定の品質で情報提供ができるようにします
    • 小児歯科の場合、子供にも理解しやすい言葉遣いや資料を用いる工夫が必要です。また、保護者が抱える疑問や不安に答えるための情報も準備します。資料にあるように、説明資料をPDFで用意し、公式LINEを通じて保護者に提供することも有効です。
  5. 説明ツールの準備をする:
    • 口腔内写真、レントゲン写真、模型、動画など、視覚的に理解を助けるツールを準備します
    • 資料にあるように、治療の流れや矯正に関する説明資料などをPDFで用意し、タブレットなどで提示したり、公式LINEで共有したりすることも有効です。
  6. カウンセリングの実施:
    • 患者(子供と保護者)の状況やニーズを丁寧にヒアリングします。SPIN話法(状況、問題、影響、解決策)を活用して課題を引き出し、解決策を提示することも有効かもしれません。
    • 専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明することを心がけます。特に、保護者が治療方針や費用について納得できるように丁寧に説明します。
    • 質問しやすい雰囲気を作り、保護者の疑問や不安に真摯に答えます。
    • バンドワゴン効果(多くの人が行っていると安心する心理)を利用して、治療や予防のメリットを伝えることも考えられます。
  7. カウンセリング後のフォローアップ:
    • カウンセリング後、必要に応じて電話や公式LINEなどでフォローアップを行います。
    • 質問や疑問に対応したり、追加の情報を提供したりすることで、保護者の不安を解消し、信頼関係を構築します。
  8. 効果測定と改善:
    • カウンセリングの実施状況や成果(治療同意率、予約獲得率など)を定期的に評価・分析します。
    • データを基に改善点を見つけ、カウンセリングの内容や方法を継続的に見直します。例えば、補綴コンサルのように、定期的に打ち合わせを行い、説明率の向上を図るなどの取り組みが考えられます。

カウンセリングは以下のコラムを参照下さい。

https://ami-h.com/2025/04/02/%e3%80%90%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e3%80%91tc%e6%b4%bb%e5%8b%95%e3%82%92%e6%95%b0%e5%80%a4%e5%8c%96%e3%81%97%e3%80%81%e8%87%aa%e8%b2%bb%e7%8e%87up%e3%81%b8

小児歯科特有の配慮として、子供が怖がらずに安心して治療を受けられるような説明や、保護者の子育てに関する悩みや希望に寄り添った情報提供も重要になるでしょう。公式LINEを活用して、年齢に応じた情報発信や、来院を促すメッセージ配信なども効果的と考えられます。

まとめ

2030年に向けた小児歯科経営においては、口腔機能発達不全症という医療ニーズへの対応を核としつつ、デジタルツール(公式LINE、Instagramなど)を活用した効率的な集客と患者エンゲージメントの強化が不可欠です。質の高い初診カウンセリングによる信頼構築、0歳からの教育と保護者啓蒙、そして生涯にわたる口腔健康を支えるメンテナンス体制の確立と小児矯正へのスムーズな連携を通じて、地域の子どもたちの健やかな成長に貢献し、持続可能な医院経営を実現することが求められます。社会や医療環境の変化に柔軟に対応し続けることが、未来の小児歯科医院の発展へと繋がるでしょう。