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開業
2025/04/14

歯科クリニック開業までのスケジュール、マーケティング戦略手法のご紹介

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少子高齢化が進む中でも、歯科医療の重要性はますます高まりを見せています。特に、予防歯科や審美、矯正、小児歯科といった分野におけるニーズは増加傾向にあり、「通う価値のある歯科医院」を選ぶ患者様が増えてきました。これから開業を目指す歯科医師にとって、こうしたトレンドは追い風となるものの、開業を成功に導くためにはマーケティングの視点が不可欠です。この記事では、2024年度の報酬改定の状況、開業前に行うこと、開業から開院後まで、どのようなマーケティング戦略を段階的に展開すべきかを詳しくご紹介します。


歯科医院における報酬改定と厚生労働省の考え

2024年6月に実施された歯科診療報酬改定は、予防歯科の強化、デジタル技術の活用促進、在宅医療の推進など、歯科医療の質向上と持続可能性を目指す重要な変更が行われました。以下に主なポイントをまとめます。

予防歯科の強化

高齢化社会に対応し、口腔疾患の重症化予防が重視されました。特に、小児や高齢者の口腔機能管理に関する評価が見直され、保険適用の範囲が拡大されました。これにより、早期からの口腔機能の維持・改善が促進されます。


デジタル技術の活用促進

CAD/CAM冠用材料の適応範囲が拡大され、エンドクラウンや光学印象の保険適用が進められました。また、歯科医師と歯科技工士の連携加算が新設され、デジタル技術を活用した歯冠修復の効率化と精度向上が期待されています。


在宅医療の推進

在宅療養支援歯科診療所の評価が見直され、訪問診療の算定要件が緩和されました。これにより、在宅での歯科医療提供体制が強化され、高齢者や通院困難な患者への対応が充実します。


医療従事者の賃上げ評価

歯科衛生士や歯科技工士の賃金改善を評価する新たな加算が設けられました。これにより、人材確保と職場環境の改善が図られ、歯科医療の質の向上が期待されます。


5. かかりつけ歯科医機能の見直し

従来の「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」が廃止され、新たに「口腔管理体制強化加算(口管強)」が導入されました。これにより、口腔機能管理の実績や訪問診療体制の整備が評価され、地域における歯科医療の役割が再定義されました。


これらの改定は、歯科医療の質と持続可能性を高めるための重要なステップです。今後の歯科開業において、これらの変更点を踏まえた対応が求められます。

歯科開業までの流れ

開業準備といえば、物件探しや設備投資、スタッフ採用など、やるべきことは山積みです。しかし、その中でも見落とされがちなのが「マーケティングの準備」です。特に、自費率を高めていきたいと考える場合、事前の情報発信が開業後の集患数や単価に大きく影響します。

患者様は開院前から情報収集を始めています。口コミやSNS、Google検索、そして最近ではLINE公式アカウントを通じて、「どんな医院なのか」「信頼できるのか」を判断しているのです。したがって、開業の数か月前から“仕込み”を始めることが、成功の鍵を握ります。また歯科医院の開業は、単なる診療所の設立ではなく、経営者としての一歩を踏み出す重要なプロジェクトです。成功するためには、綿密な計画と準備が不可欠です。以下に、開業までの流れを具体的に解説します。


開業構想と事業計画の策定(12〜18ヶ月前)

開業の目的とビジョンの明確化

まず、どのような歯科医院を開業したいのか、明確なビジョンを持つことが重要です。例えば、「地域密着型のファミリー向けクリニック」や「審美歯科に特化した専門医院」など、ターゲットとする患者層や提供するサービスを具体的に設定します。

事業計画書の作成

事業計画書には、以下の内容を含めます。

  • 開業の目的
  • 診療内容と提供するサービス
  • ターゲットとする患者層
  • 立地条件と物件の選定基準
  • 必要な設備とその導入計画
  • 資金計画(初期投資、運転資金、収支予測)
  • 人員計画(必要なスタッフ数と役割)
  • マーケティング戦略(集患方法、広告宣伝計画)

この段階で、開業コンサルタントや会計士、金融機関と相談しながら、現実的で実行可能な計画を立てることが成功への第一歩です。


資金調達と物件選定(10〜12ヶ月前)

資金調達

歯科医院の開業には、一般的に5,000万円から2億円程度の資金が必要とされています。内訳としては、内装工事費、医療機器の購入費、運転資金などが含まれます。自己資金だけでなく、金融機関からの融資、公的な補助金や助成金の活用も検討しましょう。

物件選定

立地は、歯科医院の成功を左右する重要な要素です。以下の点を考慮して物件を選定します。

  • 交通の利便性(駅からの距離、駐車場の有無)
  • 周辺の人口動態(年齢層、家族構成)
  • 競合医院の有無とその診療内容
  • 物件の広さとレイアウトの柔軟性

物件が決まったら、賃貸契約や建築確認申請などの手続きを進めます。


内装工事と設備導入(6〜9ヶ月前)

内装工事

患者さんが安心して通えるような、清潔感と快適性を兼ね備えた内装を目指します。診療室、待合室、受付、スタッフルームなど、動線を考慮したレイアウトを設計します。バリアフリー対応や感染対策も重要なポイントです。

医療機器の選定と導入

診療内容に応じて、必要な医療機器を選定します。例えば、診療ユニット、デジタルレントゲン、滅菌器、電子カルテシステムなどです。機器の選定は、信頼できるディーラーと相談しながら進めましょう。


スタッフ採用と研修(4〜6ヶ月前)

スタッフ採用

歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフなど、必要な人員を採用します。求人広告の掲載、面接、採用決定までのスケジュールを立て、計画的に進めます。

スタッフ研修

採用したスタッフには、医院の理念や業務フロー、接遇マナー、機器の操作方法などを研修します。開業前にチームとしての一体感を醸成し、スムーズな診療開始を目指します。


各種申請手続きと広報活動(1〜3ヶ月前)

申請手続き

開業にあたって、以下の申請手続きが必要です。

  • 診療所開設届(保健所)
  • 保険医療機関指定申請(厚生局)
  • 医療機器設置届(保健所)
  • 開業届(税務署)
  • 労災保険、雇用保険の加入手続き

これらの手続きには、必要書類の準備や提出期限があるため、余裕を持って進めましょう。

開業までのマーケティングの流れ

物件、資金調達、採用が決まると次は集患です。特に近年、患者さんが情報を得る手段としてインターネットが主流となり、WEBマーケティングの重要性はますます高まっています。

「どのタイミングで、何を始めればいいの?」

「競合クリニックにどう差をつければいい?」

そんな疑問や不安を抱える先生方も多いのではないでしょうか。

クリニック開院前から開院後まで、フェーズごとに取り組むべきWEBマーケティング戦略を、具体的なステップに沿って徹底解説します。開業準備を始めたばかりの方も、これから計画を立てる方も、ぜひ参考にしてください。

大きく分けて、以下の3つのフェーズで戦略的に進めていきましょう。

  1. フェーズ1:開院前の準備(6~9ヶ月前) – 市場を理解し、WEBの土台を築く期間。
  2. フェーズ2:開院前後の活動(1~2ヶ月前) – 開院を告知し、スタートダッシュを切る期間。
  3. フェーズ3:開院後の運用 – 集患を継続・最大化し、クリニックを成長させる期間。

それぞれのフェーズでやるべきことを、詳しく見ていきましょう。

フェーズ1:開院前の準備(6~9ヶ月前)- 徹底的な市場調査とWEB環境構築

開院の半年前から9ヶ月前は、本格的なWEBマーケティングの準備期間です。ここでしっかりと土台を築くことが、後の成功に大きく影響します。

マーケットの把握:ターゲットと競合を知る

まず最初に行うべきは、徹底的な市場調査です。

  • キーワード選定:
    • 自分たちのクリニックがある地域(例:「五反田」)と、提供する診療科目(例:「歯医者」「インプラント」「矯正歯科」など)を組み合わせ、患者さんが検索しそうなキーワードを洗い出します。
    • 「地域名 + 悩み(例:歯が痛い)」なども考慮に入れると良いでしょう。
    • これは、今後のウェブサイト制作やSEO対策、広告運用の基礎となる、非常に重要な作業です。方位磁石なしに航海に出るような無謀な挑戦にならないよう、しっかりとキーワードを選定しましょう。
  • キーワードごとの順位分析:
    • 選定したキーワードで、実際にGoogleなどで検索し、どのようなクリニックが上位に表示されているかを確認します。
    • これにより、どのキーワードで競合が強いのか、どのキーワードなら上位を狙えそうか、といった戦略が見えてきます。
  • 競合医院の割り出し:
    • 上位表示されているクリニックは、直接的な競合となります。患者さんがあなたのクリニックとどのクリニックを比較検討するかを把握することは、サイト制作やマーケティング戦略を立てる上で不可欠です。
  • 競合医院のWEBサイト分析:
    • 競合クリニックのウェブサイトを詳しく分析します。どのようなデザインか、どんな情報を発信しているか、強みは何か、想定されるアクセス数はどれくらいかなどを調査します。
    • これにより、自分たちのクリニックのウェブサイトで、どのような点を強化すべきか、どのようなコンテンツを盛り込むべきかのヒントが得られます。

2. WEBマーケティング環境準備:土台を築く

市場調査と並行して、WEBマーケティングを行うための環境を整えていきます。

  • WEBサイト準備:
    • ドメイン取得: クリニック名や地域名を含んだ、覚えやすく信頼性のあるドメインを取得します。まずは簡単な仮ページを公開しておくと良いでしょう。
    • サイトマップ設計: 競合分析やヒアリング内容をもとに、どのようなページ構成にするか(サイトマップ)を設計します。トップページ、医院紹介、診療案内(科目ごと)、費用、アクセス、スタッフ紹介、ブログ、お知らせ、問い合わせフォームなどは基本的な構成要素です。
    • 素材作成: ウェブサイトに必要な文章(原稿)、写真、イラストなどの素材を準備します。特に写真は、プロに依頼するなどして、清潔感と信頼感が伝わる質の高いものを用意しましょう。この段階で、クリニックの独自の強み(USP: Unique Selling Proposition)を明確にし、それを表現できる素材を作成することが重要です。
    • デザイン作成: クリニックのコンセプトやターゲット層に合ったデザインを作成します。見た目の美しさだけでなく、患者さんが情報を探しやすく、予約などのアクションに繋がりやすい「使いやすさ(ユーザビリティ)」も重視します。
    • プログラム(コーディング): デザインをウェブ上で表示できるように構築します。スマートフォンでの閲覧(レスポンシブ対応)はもちろん、後々ブログ更新などがしやすいようにWordPressなどのCMS(コンテンツ管理システム)で構築するのが一般的です。また、検索エンジンに評価されやすいように、SEO(検索エンジン最適化)を考慮したコーディングを行います。
  • LINEなどSNS企画・準備:
    • LINE公式アカウントやInstagram、FacebookなどのSNSアカウントを開設し、どのような情報を発信していくか企画します。開院前から少しずつ情報を発信し、地域住民の認知度を高めていくことも有効です。
  • 開院時のイベント検討・準備:
    • 開院時に内覧会(医院見学会)などを開催する場合は、その告知方法や内容を計画します。
  • 紙媒体のPR検討・準備:
    • 地域によっては、チラシや地域情報誌などの紙媒体も有効な場合があります。必要に応じて準備を進めます。

このフェーズはじっくりと時間をかけ、戦略的に進めることが重要です。「明確なターゲティングを行い、環境を整える」ことを意識しましょう。

フェーズ2:開院前後の活動(1~2ヶ月前)- スタートダッシュで認知度を高める

開院まで1~2ヶ月となったら、いよいよ本格的な告知活動を開始し、スタートダッシュをかけます。

  • 医院見学会の開催:
    • 地域住民の方々にクリニックを知ってもらい、親近感を持ってもらう絶好の機会です。 清潔な院内や最新設備、スタッフの人柄などをアピールしましょう。
  • SNSスタート:
    • 準備していたSNSアカウントで、開院情報や見学会の告知、クリニックの特徴などを本格的に発信し始めます。
  • WEBサイトスタート:
    • 制作したウェブサイトを正式に公開します。
  • WEB広告設定&スタート:
    • 開院当初は、ウェブサイトへの自然なアクセス(検索エンジンからの流入など)だけでは、十分な集患が難しい場合があります。そこで、WEB広告(リスティング広告など)を活用し、ウェブサイトへのアクセス数を増やします。
    • 広告設定のポイント
      • アセット登録: 魅力的な広告タイトルや説明文、画像などを複数パターン登録し、効果の高い組み合わせをテストできるようにします。電話番号やサイトリンク(特定のページへのリンク)なども設定します。
      • キーワード設定: フェーズ1で選定したキーワードの中から、広告を出したいキーワードを設定します。関連性の低いアクセスを除外するための「除外キーワード」設定も重要です。「完全一致」や「部分一致」などのマッチタイプを適切に設定します。
      • 地域設定: 広告を表示する地域を詳細に設定します。クリニックの所在地周辺や、ターゲットとする患者さんが住んでいるであろう沿線駅の周辺(例:半径3km圏内)などを設定します。

このフェーズでは、「広告や見学会でスタートダッシュをかける」ことを目標とします。

フェーズ3:開院後の運用 – WEB環境を「育て」、集患を最大化する

無事に開院を迎えた後も、WEBマーケティングは終わりではありません。むしろここからが本番です。収集したデータをもとに分析と改善を繰り返し、WEB環境を「育てていく」フェーズに入ります。

アクセスを増やす対策(流入対策)

ウェブサイトへのアクセスを増やすための施策です。

  • SEO対策 (Search Engine Optimization):
    • 検索エンジン(主にGoogle)で、特定のキーワード(例:「地域名 + 診療科目」)で検索した際に、自院のウェブサイトが上位に表示されるように最適化する施策です。
    • 質の高いコンテンツ(ブログ記事など)を定期的に追加・更新したり、サイト内部の構造を改善したり、他のサイトからのリンク(被リンク)を獲得したりするなど、様々な手法があります。
    • Googleの検索アルゴリズムは日々変動するため、定期的に順位をチェックし、必要に応じて対策を見直す必要があります。
    • SEO対策によって自然検索からの流入が増えれば、広告費を抑えながら安定した集患が見込めます。
  • MEO対策 (Map Engine Optimization):
    • Googleマップ検索で上位表示させるための対策です。「地域名 + 歯医者」などで検索した際に、マップと共に表示されるクリニック情報(Googleビジネスプロフィール)を充実させることが重要です。
  • 広告のブラッシュアップ:
    • WEB広告の成果(クリック率、コンバージョン率、集患単価など)を分析し、キーワード、広告文、ターゲティング設定などを継続的に改善します。
    • どれくらいの広告費で、何人の新規患者さんが来院したか(集客単価)を把握し、費用対効果の高い広告運用を目指します。

2. サイトからの集客を増やす対策(CV対策 – Conversion Rate Optimization)[so

ウェブサイトにアクセスしてくれたユーザーを、実際の来院(予約や問い合わせ)に繋げるための施策です。

  • アクセス解析:
    • Google Analyticsなどのツールを使って、ウェブサイトのアクセス状況(どのページがよく見られているか、ユーザーがどのページで離脱しているか、どの経路からのアクセスが来院に繋がりやすいかなど)を分析します。
    • 分析結果に基づいて、ウェブサイトのデザインやコンテンツ、導線などを改善し、コンバージョン率(アクセス数に対する来院数の割合)を高めます。
  • 口コミ対策:
    • Googleマップや口コミサイトでの良い口コミは、他の患者さんの来院を後押しする強力な要素です。
    • 開院当初から、受付などで患者さんに口コミ投稿をお願いするなどして、自然な形で口コミを増やしていくことが重要です。
    • ただし、業者を使って意図的に口コミを大量に増やす行為は、Googleからペナルティを受けるリスクがあるため避けるべきです。
  • LINE活用:
    • LINE公式アカウントを通じて、予約リマインド、定期健診のお知らせ、キャンペーン情報などを配信し、患者さんとの継続的な関係性を築き、リピート来院や自費診療への誘導に繋げます。

リピート&自費アップ対策

新規集患だけでなく、既存患者さんのリピート率向上や、より専門的な治療(自費診療)への関心を高める施策も重要です。これは主に院内でのコミュニケーションや、LINEなどを活用した情報発信が中心となります。

このフェーズでは、「結果をもとにWEB環境を育てていく」という意識を持ち、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を回し続けることが成功の鍵となります。

https://ami-h.com/2025/03/19/%e3%80%90%e7%ac%ac1%e5%9b%9e%e3%80%91%e6%ad%af%e7%a7%91%e8%87%aa%e8%b2%bb%e7%8e%87up%e3%82%92%e6%9c%80%e5%a4%a7%e5%8c%96%e3%81%99%e3%82%8b%e9%8d%b5%e3%81%aftcx%e5%85%ac%e5%bc%8fline%e3%81%ab

開業を成功させるために重要なこと

  • 早期着手と余裕のある計画: 開業直前は多忙を極めます。WEB関連の準備は、できるだけ早い段階(6~9ヶ月前)から余裕を持って始めましょう。
  • 専門家の活用: ウェブサイト制作やSEO、広告運用などは専門的な知識が必要です。必要に応じて、信頼できる制作会社やコンサルタントに相談することも有効な手段です。
  • 目的意識を持つ: 「なぜこの準備をするのか?」「誰に何を伝えたいのか?」という目的意識(明確なターゲティング)[source: 3] を常に持ち続けることが、ブレのない戦略実行に繋がります。

「開業前の準備」が成功の鍵

クリニック開業の成功は、決して偶然の産物ではありません。開院前の地道で計画的な準備こそが、その後のクリニックの未来を明るく照らすための、最も確実で重要なステップです。

特に、WEBマーケティングの基盤となる「マーケットの把握」と「WEB環境の整備」は、時間と労力をかけて丁寧に行う価値があります。ここで築いた土台が、開院後のスムーズなスタートダッシュ、そして持続的な成長を支える力となるでしょう。

開業準備は大変な道のりですが、一つ一つのステップを着実にクリアしていくことが、理想のクリニック実現への近道です。さあ、今日から未来への投資である「開業前準備」を、計画的に始めてみませんか?

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